働き方改革|複業(副業・兼業)のすすめ

働き方改革には色々な文脈があり、制度の話だったり、環境の話だったり、インフラやシステムの話だったり、女性やシニアの活用だったり、組織開発の話だったりと、あらゆる視点で語られる。
本稿では、「複業(副業・兼業)といった柔軟な働き方」について個人の視点で、考えてみる。

図1:本業を100とした場合の副業収入額
(出典:アジア8カ国を対象にした分析報告書 37p
2013年、リクルートワークス研究所)
先ずは、諸外国の複業の状況をご紹介する。
図1は、「本業を100とした場合の副業収入額」の割合を示している。オレンジの線より右が「副業収入が本業の50%以上」つまり、仮に本業の収入が400万円であった場合、200万円以上の副業収入がある人の割合を示している。
中国や韓国では、約15%の人が50%以上の副業収入があると言うわけである。タイでは約30%、インドネシアやベトナムでは約35%、インドやアメリカでは約40%、マレーシアに至っては約50%となる。

日本では、2017年3月に政府が、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を発表した。その中に「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」という項目(17p)がある。そこには、以下のように書かれている。
副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る
しかし、中小企業庁の調査(「兼業・副業に係る取組み実態調査」2014年)によれば、兼業・副業を認めていない企業は85.3%と圧倒的多数を占める(13p)。
つまり日本では、多くのサラリーマンは、本業からの収入を持たないことを意味する。

これについて、厚生労働省は、「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業
研究会提言」の中で、兼業・副業のメリットとデメリットを企業(使用者)、従業員(労働者)それぞれの視点で整理している(4p)。
これによれば、企業(使用者)と、従業員(労働者)のそれぞれに、メリットとデメリットがあり、一概には良し悪しが付けられない状況が見て取れる。これが、先の調査で兼業・副業を認めていない企業が多い(=前例を踏襲し、新しい挑戦をしない)ことの要因かもしれない。

ここでは、個人(=従業員、労働者)の視点で、2つのケースを考えてみる。
  1. 本業で800万円の収入を得ているケース
  2. 本業で400万円、副業で400万円、計800万円の収入を得ているケース

いずれも総収入は800万円である。この場合、どちらを選択するか?

ここに、金融の分散投資(ポートフォリオ)の考え方を適用する。分散投資とは、複数の特徴の異なる金融商品に投資することによりリスクを減らす方法である。つまり、1社から800万円の給与収入を得るよりも、複数社からの収入で800万円にする方を選択することが、リスクを減らせるということである。これは、絶対額の問題ではなく、相対的な割合の問題である。本業からの収入の割合を減らすることが、リスクを減らすことである。

もし、本業となる会社が倒産したり解雇された場合でも、収入が無くなるわけではない。
また、本業となる会社から無理な要求(不正、過剰労働、ハラスメント等)を受けた場合、後者であればNOと断ることが可能かもしれない。しかし、前者の場合は、経済的な理由からNOと断れず無理な仕事をしなければならず、結果としてメンタルや過労死、不正加担という最悪の事態を招くことになるかもしれない。

言い換えれば、経済的な独立が健全な関係(会社と個人)を維持するポイントと言える。
あなたの収入が、特定の1社からに依存していると言うことは、それは特定の1社に支配されていると言える。このまま、1社に支配されて生き続けるのか。
これは、会社が主導する「働き方改革」ではなく、あなた個人が主導する「働き方改革」の視点となる。